ご存知ですか?IVD−疾患の早期発見と予防に貢献
体外診断薬(IVD=in vitro diagnostics)は、血液や尿などを測定する場合に用いられ、その測定結果から、ほぼ全身の状態を知ることができます。疾病の有無、病状、また、経過の把握に役立ち、診断や診療方針の選択に有効な情報を提供し、タイミングのよい治療や経過観察に重要な役割を果たします。また、一般の健康診断や人間ドックでも疾病の早期発見や予防に貢献し、医療経済全体の縮小化にも寄与しています。このように体外診断薬は、現代医療には欠かすことのできない先端技術です。
では、身近な例として、今日の日本で最も関心の高い疾病である「がん」、「糖尿病」、「C型肝炎」の診断や治療に、体外診断薬はどのように役立っているのでしょうか。
職業感染の現状
職業感染の原因は採血、注射,点滴時などに、医師、看護師、臨床検査技師らが、患者の血液や体液のついた針によって刺傷する針刺し事故がもっとも多く、鋭利器材を使用する医療スタッフは毎日、針刺し事故の危険性に曝されているのが現状です。(1回の針刺し事故で感染するリスクは、HIV0.3%、HCV1.8%、HBV6〜30%)。全国エイズ拠点病院では、3年間に11,798件の針刺し事故が報告され、事故報告率は22%以下と推定され(1992年発表の誤刺に関するアンケート調査結果によると、6ヶ月で3人に1人が事故を経験しているが報告していない)、日本での職業感染防止に対する安全意識の低さを物語っています。
針刺し事故の発生段階をみると、各器材によって,使用中・抜針時、リキャップ(使い終わった針をキャップに戻す)時、使用後廃棄までの間に多発しており、その2大要因として各器材の構造の特性、事故を誘発しやすい器材の取り扱い方法が上げられます。
日本での針刺し事故は、医療従事者個人の技術の低さや不注意からくるものとして片づけられがちでしたが、煩雑な医療現場での事故防止を徹底するためには、安全性を工学的に追求した器材を導入するなどの、実践的な感染予防対策を講じる必要があります。
がんの早期発見に活躍
日本では1981年から脳血管疾患にかわって死因の1位を占めているのが「がん」です。中でも男性は肺がん・胃がんが、女性は乳がんがトップ、しかも乳がんは年々増加傾向にあります。しかし、胃がんでも早期に発見すると生存率が90%を越えることを考えると、早期発見や経過観察に欠かせない体外診断薬が、国民の健康に大きな役割を果たしていることは無視できません。また、身体への侵襲がなく、簡単・迅速に結果がわかるため、患者のQOLの向上や治療方針の選択に役立ち、医療経済におけるムダの軽減にも寄与しています。
体外診断薬を使って行う、がん細胞の目印となる腫瘍マーカー(血液中などに出たがん細胞がつくり出す特有の物質やその代謝産物などで、現在測定に使っているのはおよそ30種類)検査は、画像診断などと合わせた補助診断として活躍しています。
腫瘍マーカーには、がん細胞が存在する臓器が特定できる臓器特異性の高いものと、がん細胞がどこかに存在する事を示すものがあり、単独のマーカー、あるいはマーカーを組み合わせることによって、どの臓器のがんか、どんな性質のがん細胞が存在するかなどを総合的に診断できます。見落としがちな隠れたがんも、血清中の腫瘍マーカーの異常値により発見に結びつけることができます。また、がんになりやすい人のスクリーニングや、最近話題の前立腺がんの経過観察(PSA=前立腺特異抗原)などにも腫瘍マーカー検査が使われています。
血糖値の自己管理
「糖尿病」は、いまや40才以上では、10人に一人罹患していると言われ、国民病とまでいわれる生活習慣病です。血糖値が正常値より高く、近い将来本格的な糖尿病になりかねない予備軍をも含めると1,370万人に達するといわれています。糖尿病は、それ自体が死因となることはありませんが、自覚症状がなく進行する場合が多く、定期的な血糖値の測定により早期発見することが重要です。また、糖尿病の場合に、血糖値のコントロールを怠ると、網膜症、腎症、神経障害などの重大な二次疾患を起こしたり、また動脈硬化が進んで脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの危険な疾患を引き起こしたりもします。このことから、早期発見とともに血糖値のコントロールは大変重要です。体外診断薬はここでも糖尿病の早期発見と血糖値の上手なコントロールに欠かせない検査に用いられます。
定期的な血液検査や合併症に関する検査の実施、また、患者自身が簡易血糖値メーターを使用して自己管理を徹底すれば合併症の発症を抑制することができ、健康人と同じように生活できます。その結果、マクロ的にみた医療費の削減にもなります。
定期検査のひとつとして、現在では、40歳以上の健康診断に血糖値や糖化ヘモグロビンといった体外診断薬を用いる検査が含まれています。
感染症にも実力を発揮
「C型肝炎」は現在200万〜250万人の患者がいると推測されており、高齢社会を迎えた日本では社会的問題となっています。2002年から40歳以上の健康診断に血液検査によるHCV(C型肝炎ウイルス)抗体検査が含まれるようになりました。HCVは潜伏期間が長く、自覚症状がほとんどないのが特徴ですが、この検査のおかげで感染に気づいていないキャリアも発見されやすい体制が整ってきたといえます。(この検査は老人保健法、政府管掌健康保険による住民健診プログラムに含まれています)。
C型肝炎は主にHCVに感染した血液が体内に入ることによって引き起こされます。以前は、体外診断薬によるHCV抗体検査が確立されておらず、HCVが混入した血液製剤が輸血に用いられ、多くの人が感染していますが、近年では献血されたすべての血液は、HCV抗体検査をしているので感染の心配はほとんどなくなりました。
HCVに感染すると肝臓の細胞が徐々に破壊されていき、多くの場合慢性肝炎へ移行し、20〜30年後には肝硬変、肝臓がんになるリスクが非常に高くなります。そのため、HCV抗体検査を実施していない血液を輸血された可能性が大きい1992年以前の輸血経験者については、現在特に症状がなくても、体外診断薬による第一段階のスクリーニング検査(例えばHCV抗体検査)で感染を発見することが急務となっています。検査結果が陽性の場合、より確実な治療方針の情報を得るためにウイルス量を反映する遺伝子増幅法やHCV抗原検査などの体外診断薬検査が薦められます。
以前は非A非B型という認識でしかなかったC型肝炎ですが、1989年に結果が簡単にわかるHCV抗体検査試薬が市販されるようになり、今日では早い段階からC型肝炎の診断が可能になり、治療を開始することができます。抗体検査のほかにも、肝細胞が破壊された時に放出される酵素(ALT、AST)を測定したり、肝炎の活動度を肝生検により判定したり、さらに、遺伝子型検査やウイルス量を反映する遺伝子増幅法やHCV抗原検査を行ない、治療薬インターフェロンの効果予測・経過観察なども行います。
このように、病院や診療所で大きな役割を果たしている高度な医療技術である体外診断薬は、日々進歩しています。採血や採尿そのものは簡単で短時間で済むため受診者のQOLが最大限に尊重されます。また、患者の重症化を防止し、治療期間や入院日数も減ることから、医療の効率化にも貢献しています。
